逗子まで行ったときにちまちま書いてたやつ。

逗子まで行ったときにちまちま書いてたやつ。
ホームの端で、柵にもたれながら続く鉄路を眺める。
歴史ある町並みと緑の山々、そのあわいから覗く、深い瑠璃色。
この先にあるそれらを、自分は知っていた。
北鎌倉。鎌倉。逗子。
そこは去年まで、幾度と無く足を踏み入れていた場所だ。
たった3つ。
けれど

「もう、一年経ったのか」

早いな、と。
突然掛けられた声に、ぼんやりと頬杖をついていた横浜は慌てて振り向いた。
「横須賀…」
何でいるの。そう言おうとして、それが酷く馬鹿げた問いで有ることにすぐに気がついた。
ここは大船だ。彼が居ることに、何ら不思議な事はない。―――自分と違って。
後ろ向きな感情に捕らわれて、思わず押し黙る。
けれど、横須賀は別段気にした様子もなく、無言のまま、自分の隣にもたれ掛かった。
「何考えた?」
「………」
もう一年、という言葉を発したからには、彼にだって、自分が何を思っていたかくらい分かっているはずだ。
それでも訊くということは、それを越えたところの話なのだろう。……つまりは、寂しいとか悔しいとか、そういった類の。
事実、逗子行きが無くなることを知らされて一番に思ったのはその二つだった。去年は元旦の終夜運転も切られていたから、その思いは尚更強かった。
けれど、当時抱いた感情を今更になってあれこれ言ったところでどうなる話ではないし、乗り入れ先だった横須賀に告げて、今さら彼を困らせるつもりもない。
「……べつに」
だから、適当にあしらうように、ふいと目を逸らしながら素っ気なく返す。
そんなこちらの態度に、横須賀は微かに笑ったようだった。
「…何がおかしいんだよ」
「いや、かわいい弟が悄気てるみたいだから、慰めてやろうかなって思って来たんだけど」
「やめてよ気持ち悪い」
「ひどいなぁ」
ほんとに心配してるんだけどな、と、空とぼけた表情で言うものだから、本当か冗談か分からなくて困る。
けれど、嘘だろうが真実だろうが、本当はどちらでもいいのだ。
彼がここに来てくれたことが、自分が許されていたという確かな証なのだと、今では思えるようになったから。

だから、こんな言葉にだって、きっと笑顔のままで頷ける。


『まってるよ。』



*ほんとにまた来てくれ…!orz